青色申告とは?白色申告との違いや申請方法について~フリーランスの基礎知識~
2021.08.17

確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2通りがあります。
この2つの大きな違いは、青色申告が税制上の優遇を受けられるのに対して、白色申告には優遇措置がない点です。
「青色申告は難しそうだから白色申告をしている」という人も多いですが、実は青色申告でも簡易的な帳簿づけで申告できるものがあります。
青色申告にするだけで節税効果を得られるため、フリーランスや個人事業主にとって大きな助けとなるはずです。
この記事では、青色申告と白色申告の違いや青色申告のメリット、申請方法についてご紹介いたします。
フリーランスなら知っておきたい!青色申告とは?

青色申告とは、税制上の優遇措置を受けられる申告制度のことです。
なぜ、青色申告が税制上の優遇措置を受けられるかというと、一定水準の記帳をし、その記録に基づいて確定申告を行うからです。
そもそも、日本の税金の大半は納税者による申告「申告納税制度」を採っているため、正しく納税されるには、帳簿の存在が欠かせません。
そこで、一定水準の帳簿書類を備えて日々の取引を記帳し、保存する義務を負う代わりに、税制上の優遇を受けられるように「青色申告制度」が導入されたのです。
要するに、「きちんと記帳して納税した人は、特典を受けられますよ」という制度ですね。
例えば、青色申告をすると「最大65万円の特別控除」「3年間の赤字の繰越し」などの特典を受けられます。
ただし、青色申告は誰でもできるものではありません。
対象となるのは、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」があり、期日までに「青色申告承認申請書」を所轄の税務署長に提出した人のみです。
白色申告はフリーランスには旨味がない?青色申告との違い

では、白色申告は青色申告には、どういった違いがあるのでしょうか。
両者の大きな違いは、
- 事前申請の有無
- 簿記の種類
- 税制上の優遇の有無
青色申告と白色申告の違いを表にまとめましたので、参考にしてみてください。
|
青色申告
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白色申告
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---|---|---|---|---|
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65万円控除
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55万円控除
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10万円控除
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事前申請
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開業届・青色申告承認申請書
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不要
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簿記の種類
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複式簿記
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複式簿記
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単式簿記
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単式簿記
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確定申告書類
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青色申告決算書 確定申告書B
|
青色申告決算書 確定申告書B
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青色申告決算書 確定申告書B
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収支内訳書 確定申告書B
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電子帳簿保存or e-Taxによる電子申告
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必要
|
不要
|
不要
|
不要
|
事前申請
青色申告の申請をする場合は、原則としてその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
承認申請書が提出されていない場合、自動的に白色申告となるため、注意が必要です。
ちなみに、一度承認されれば「青色申告者」となるため、以降も継続して青色申告が適用されます。
簿記の種類
簿記の種類は、
- 青色申告(65万円控除・55万円控除)⇒複式簿記
- 白色申告・青色申告(10万円控除)⇒単式簿記
複式簿記は、「借方」「貸方」2つの方向からお金の動きを記録する方法を言います。
専門的な知識が必要ですが、お金の流れが分かりやすいため、税制面の優遇が大きいです。
一方、単式簿記は、家計簿のように収支のみを帳簿につける方法です。
「電子帳簿保存」or「e-Taxによる電子申告」
2020年分の所得に対する確定申告から、65万円の控除を受けるには、従来の要件に加えて「電子帳簿保存」or「e-Taxによる電子申告」のどちらかを行う必要があります。
電子申告をしない場合は55万円の控除となりますが、基礎控除が10万円増額されているため、実質の増減はゼロです。
結論、青色申告がおすすめ
白色申告のメリットは、「単式簿記」という簡易的な帳簿づけでOKな点です。しかし、単式簿記での帳簿づけは、青色申告特別控除10万円と同じなので、実際のところ手間は変わりません。
手間が変わらないのであれば、税制上の優遇を受けられる青色申告の方が良いのは明らかです。
青色申告でフリーランスが得られる5つのメリット
では、フリーランスが青色申告すると、具体的にどんなメリットを得られるのでしょうか。
特別控除
青色申告で得られる最大のメリットは、最高65万円の特別控除を受けられる点です。収入から65万円を差し引くことができるため、納税額を大幅に減らすことができます。
では、白色申告と青色申告(65万円控除)で、どのくらい納税額が変わるのか見てみましょう。
例)収入500万円/経費100万円/各種控除100万円
白色申告だと…
500万円-150万円-100万円=250万円(課税所得金額)
250万円×10%-97,500円=152,500円(所得税額)
青色申告だと…
500万円-150万円-65万円-100万円=190万円(課税所得金額)
190万円×5%=95,000円(所得税額)
このように、“申告の違いだけで”5万円以上の差が出ていることが分かりますね。
日本では、累進課税制度を採っているため、利益が多いほど青色申告による節税効果は高くなります。
所得税の計算方法については「フリーランスが知っておきたい所得税の計算方法と納税方法」をご覧ください。
家族への給与は全額経費算入できる
フリーランスのように個人で事業を営む場合、家族や親族に給与を支払っているケースも多いでしょう。青色申告の場合、妥当性のある金額であれば、家族や親族に支払う給与を「専従者給与」として、上限なくすべて経費精算することができます。
白色申告にも「専従者控除」がありますが、
- 配偶者…最大86万円
- その他親族…最大50万円
3年間赤字を繰り越せる
青色申告では、3年間の赤字繰越が認められているため、黒字の年と相殺することができます。「黒字の年と相殺できる=利益が分散される」ということなので、課税対象となる所得金額を抑えられるのです。
課税対象となる所得金額が低ければ、必然的に支払う納税額も少なく済むため、節税につながります。
30万円未満の減価償却資産なら一括で経費計上できる
減価償却とは、時の経過とともに価値が減少していく「減価償却資産」を取得した際、定められた期間(耐用年数)に応じて分割計上する会計処理のことです。青色申告は、1つ30万円未満の少額減価償却資産に関しては、購入または使用開始した年度に一括経費計上することができます。
もちろん、通常通り耐用年数に応じて分割計上することも可能です。
PCや自動車といった資産を購入した年の利益と照らし合わせて、ダメージが少ない方を選択できるのは、青色申告者の特権と言えるでしょう。
特例の対象となるのは、
- 2006年4月1日~2022年3月31日までに購入した減価償却資産
- 取得価額が30万円未満のもの
です。
また、経費計上可能な年間減価償却資産は、合計300万円までと定められています。
どんなフリーランスが青色申告できるの?
青色申告は、誰でも申告できるものではありません。
ここでは、青色申告の対象となる条件をご紹介いたします。
青色申告の対象となる所得
青色申告の対象となる所得は、- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
事業所得
事業所得は、農業や漁業、小売業、サービス業、自由業といった自営業による所得を言います。
例えば、プログラマー、ライター、デザイナーなどのフリーランサーや、店舗を運営している個人事業主が該当します。
不動産所得
不動産所得とは、アパートやマンションといった建物や駐車場などの不動産賃貸による所得のことです。
なお、不動産所得で65万円もしくは55万円の控特別除を受けるには、「事業的規模」と認められる必要があります。
事業的規模の目安としては、
- アパートやマンションなら、10室以上貸与可能
- 戸建て物件なら、5棟以上貸与可能
です。
ただし、賃料収入の規模が大きい場合、これらの基準を満たさなくても事業的規模と認められることがあります。
山林所得
山林所得は、山林の伐採による譲渡や立ち木のままの譲渡によって得た所得のことです。
ただし、山林の取得後5年以内に伐採または立ち木のまま譲渡を行った場合、山林所得ではなく、事業所得か雑所得となります。なお、山ごと譲渡した場合は譲渡所得です。
青色申告承認申請書の提出
青色申告をするには、「青色申告承認申請書」を所轄の税務署へ事前に提出しておかなくてはなりません。提出期限は、以下の通りです。
区分
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提出期限
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---|---|---|
新規開業
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1月15日以前の開業
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青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで
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1月16日以降の開業
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業務を開始した日の2ヶ月以内
|
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白色申告⇒青色申告
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青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで
|
なお、相続によって業務を継承した場合は、この限りではありません。
詳細は、国税庁「No.2070 青色申告制度」をご確認ください。
会社員の副業は事業所得と認められるかがポイント
副業を行っている会社員の場合、事業所得と認められれば、青色申告が可能です。本業の片手間として副業を行っている場合は、「雑所得」と判断されます。
事業所得と認められるには、「継続性があり、相応の人力や設備を投資している」といった条件をクリアしなくてはなりません。
よって、会社員の副業は、青色申告できないケースがほとんどです。
ただし、不動産所得がある会社員は、青色申告をすることができます。
そして、不動産所得が事業的規模と認められる場合、65万円もしくは55万円の特別控除を受けることも可能です。
フリーランスが青色申告する際に必要な書類や申請方法について

では、青色申告をする際に必要な書類や申請方法について見ていきましょう。
開業届と青色申告承認申請書を提出
開業日から1ヶ月以内に「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を提出しましょう。開業届を提出しなくてもペナルティを受けることはないですが、「青色申告承認申請書」と「開業届」を提出しないと個人事業主として青色申告できません。
青色申告を希望する場合は、期日までに納税地を所轄する税務署長へ提出してください。
【青色申告承認申請書の提出期限】
区分
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提出期限
|
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---|---|---|
新規開業
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1月15日以前の開業
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青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで
|
1月16日以降の開業
|
業務を開始した日の2ヶ月以内
|
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白色申告⇒青色申告
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青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで
|
申請書の様式は、下記の国税庁ホームページからダウンロードしていただけます。
参考:国税庁「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
青色申告決算書と確定申告書Bを提出
青色申告で確定申告をする場合、「青色申告決算書」と「確定申告書B」の2種類を申告期間中に税務署へ提出する必要があります。領収書を提出する必要はありませんが、原則として、
- 決算関係書類・取引関係書類・帳簿類…7年間
- その他の書類(請求書や見積書など)…5年間
保存しなくてはなりません。
問い合わせがあったときにすぐ対応できるよう、しっかりと整理しておきましょう。
青色申告決算書は、帳簿の内容を記入する書類です。
これを作成するには、複式簿記での記帳や会計知識が必要となるため、会計ソフトなどを活用すると良いでしょう。
【確定申告の期間】 確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日の1ヶ月間です。 前年の1月1日~12月31日までの所得状況や納税額を申告し、納税してください。
申請書の様式は、下記の国税庁ホームページからダウンロードしていただけます。
参考:国税庁「確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等」
青色申告の書類提出方法
確定申告を行う場合、- 税務署へ持参
- 郵送で提出
- e-Taxで申告
税務署へ持参
所轄の税務署へ直接出向き、書類を提出する方法です。
書類の作成方法が分からない場合、直接職員に聞きながら作成できるコーナーも設けられていますが、確定申告の時期は非常に混雑するため、時間がかかります。
郵送で提出
確定申告書などを作成し、必要書類ともに税務署へ郵送する方法です。
確定申告書は「信書」に該当するため、「郵便」または「信書便」で発送しましょう。
なお、切手を添付した返信用封筒を同封すれば、収受日付印の押された確定申告書の控えを送り返してもらえます。
郵送提出の場合、消印の日付が提出日です。
回収時間の関係で期限がオーバーになる可能性もあるため、できる限り早めに対応しましょう。
e-Taxで申告
e-Taxはインターネットを利用した電子申告です。
青色申告特別控除65万円を受けるには、e-Taxで確定申告書および、青色申告決算書のデータを提出(送信)する必要があります
確定申告ソフトなどを利用して確定申告書を作成し、提出することが可能なため、こういったソフトを利用するのがおすすめです。
フリーランスになったら節税効果の高い青色申告がおすすめ!
白色申告でも簡易的な帳簿づけを行う必要があるため、手間は青色申告特別控除10万円と変わりません。
白色申告にするメリットはほぼないので、フリーランスや個人事業主は、開業届や青色申告承認申請書を提出して、青色申告を行いましょう。
青色申告であれば、特別控除や赤字の繰越などの様々な優遇措置を受けることが可能なため、年間数十万円単位の節税効果を得ることも可能です。
最近では便利な会計ソフトが数多く出てきているので、こうしたソフトを活用すれば、特別な知識がなくても複式簿記での帳簿づけを行えます。
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