フリーランスなら知っておきたい! 減価償却の計算方法
2021.04.20

フリーランスの方なら「減価償却」という言葉を聞いたことはあるでしょう。減価償却は、購入した資産を分割計上する会計上のルールです。
節税にもつながるので、フリーランスの方は、減価償却の仕組みを把握しておきましょう。
この記事では、フリーランスならぜひ知っておきたい、減価償却についてまとめました!
減価償却とは
減価償却とは、固定資産の購入費用(経費)を一括計上するのではなく、長期間にわたって分割計上する会計処理です。
例えば、40万円のPCを買った場合、購入時に全額計上せず「1年目:10万円、2年目:10万円、3年目:10万円分…」のように、数年かけて費用計上することになります。
「面倒な会計処理だ」と思うかもしれませんが、適切な利益を計算するには、減価償却が欠かせません。
というのも、高額な資産(車や機材など)を購入し、それをその年に一括で計上してしまったら、決算書上は赤字になってしまうこともあるでしょう。
適切に利益計算ができていないと、事業の運営に悪影響を及ぼしてしまうため、数年にわたって少しずつ「減価償却費」として経費計上していく必要があるのです。
また、減価償却を行うと、長期にわたって経費を計上することになります。
実際にはキャッシュが出ていないにもかからず、毎年経費として一定額を計上できるので、課税される所得が抑えられて、節税につながるのです。
減価償却できる資産
減価償却の対象となる固定資産は「減価償却資産」と言い、- 業務で使用している
- 時の経過などによって資産価値が減少する
- 使用可能期間が1年以上または、取得価格が10万円以上のもの
減価償却資産のうち形のあるものを「有形減価償却資産」、形のないものを「無形減価償却資産」と言います。
【有形減価償却資産】
- 建物(事務所・倉庫 他)
- 建物の附属設備(冷暖房設備・照明設備・昇降機 他)
- 車両および運搬具(自動車・バス・トラック 他)
- 器具および備品(PC・机・椅子・応接セット 他)など
【無形減価償却資産】
- ソフトウェア
- 商標権
- 特許権
- 意匠権 など
また、牛や豚、馬といった生物・樹木も減価償却できる資産の対象です。
減価償却の方法
減価償却の定義がわかったところで、減価償却の計算方法について見ていきましょう。
計算方法を選択する
減価償却の計算方法には、「定額法」と「定率法」があります。定額法
毎年、一定額を「減価償却費」として計上する方法です。フリーランスは原則「定額法」を用いて減価償却します。定率法
毎年、一定の割合で償却していく方法です。初めの年ほど減価償却費が多く、年ごとに減っていきます。定率法を選択する場合は、税務署へ「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を提出しなくてはなりません。
提出期限:資産を取得した年分の確定申告提出期限
※期限が土・日・祝の場合は、その翌日まで
期限までに提出されなかった場合は、「定額法」とみなされます。
定額法の計算方法
定額法の計算式…「購入価額×定額法の償却率」
※定額法の償却率は、国税庁「耐用年数省令別表八」からご確認いただけます。
<計算例>取得価額100万円、耐用年数5年の減価償却資産の場合
100万円(取得価額)×0.200(定額法の償却率)=20万円(減価償却費)
5年目…199,999円(備忘価額として1円引く)
5年間の減価償却費計…999,999円
最終年は資産が残っていることを示すために「備忘価額」として1円を帳簿に残す必要があるため、他の年よりも計上できる償却費が1円少なくなります。
定率法の計算方法
定率法の計算式…「未償却残高×定率法の償却率」
※償却保証額に満たなくなった場合は「改定取得価額×改定償却率」で計算
<計算例>取得価100万円、耐用年数5年の減価償却資産の場合
- 償却率…0.400
- 改定償却率…0.500
- 保証率…0.10800
- 償却保証額…108,000円(100万円×0.10800)
年度
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計算方法
|
減価償却費
|
期末償却残高
|
---|---|---|---|
1年目
|
1,000,000円×0.400
|
400,000円
|
600,000円
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2年目
|
600,000円×0.400
|
240,000円
|
360,000円
|
3年目
|
360,000円×0.400
|
144,000円
|
216,000円 ※改定取得価額 |
4年目
|
① 216,000円×0.400=86,400 ② 216,000円×0.500=108,000円 ①⇒償却保証額未満 ②⇒「改定取得価額×改定償却率」で計算 |
108,000円
|
108,000円
|
5年目
|
216,000円×0.500=108,000円 108,000円-1円 |
107,999円
|
1円 ※備忘価額 |
償却保証額を下回った年分以降は、「改定取得価額×改定償却率」で算出し、毎年同額となります。
改定取得価額は、「償却保証額を下回った前年の期末償却残高(表の赤字箇所)」です。
減価償却できる経費の種類と耐用年数一覧

減価償却費は、耐用年数にしたがって計算することになりますが、資産によって耐用年数が異なるため注意が必要です。
以下の表を参考に、経費として毎年いくらくらい計上することになるのか、イメージしながら購入しましょう。
【耐用年数一覧表】
減価償却資産
|
耐用年数
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---|---|
事務机・事務いす・キャビネット(金属)
|
15年
|
事務机・事務いす・キャビネット(その他)
|
8年
|
応接セット(接客業用のもの)
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5年
|
応接セット(その他のもの)
|
8年
|
パソコン
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4年
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コピー機・計算機(電子計算機除く)・タイムレコーダー
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5年
|
ラジオ・TV・テープレコーダー・その他の音響機器
|
5年
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時計
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10年
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デジタル構内交換設備・デジタルボタン電話設備
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6年
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冷房用・暖房用機器
|
6年
|
電気冷蔵庫・電気洗濯機
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6年
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手さげ金庫
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5年
|
その他の金庫
|
20年
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自転車(一般用のもの)
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2年
|
2輪・3輪自動車(一般用のもの)
|
3年
|
小型車(一般用のもの)
|
4年
|
自動車(一般用のもの)
|
6年
|
詳細は、国税庁ホームページをご確認ください。
減価償却できないもの
すべての固定資産が減価償却できるわけではありません。
取得価額が10万円以上であっても、減価償却できないものもあるため、ここでは減価償却できない主な資産をご説明します。
価値が減少しない資産(美術品など)
美術品や骨とう品、土地といった、時間の経過や使用によって資産価値が低下しないものは、減価償却できません。ただし、美術品でも減価償却資産の対象となるものもあります。
取得価額が「1点100万円未満の美術品」や「時の経過によって価値が減少することが明らかなもの」は、減価償却可能です。
【美術品の減価償却取り扱い一覧】
減価償却できる⇒〇
減価償却できない⇒×
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取得価額100万円未満
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取得価額100万円以上
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---|---|---|
減価償却の原則
|
〇
|
×
|
時の経過によって価値が減少することが明らかなもの |
〇
|
〇
|
時の経過によって価値が減少しないことが明らかなもの |
×
|
×
|
美術品の耐用年数は、
- 金属製のもの(金属製の彫刻など)…15年
- その他のもの(絵画や陶磁器など)…8年
建設中の資産
建設中の建物や機械・装置などの資産は、減価償却できません。完成前に支払った代金は「建設仮勘定」として資産計上。
完成後に事業で供用され、「建物」などの固定資産勘定に切り替わった段階で、初めて減価償却の対象となります。
棚卸資産
棚卸資産とは、販売目的で一時的に保有している資産のことです。小売業の商品や不動産業における販売前の土地・建物などの商品が、棚卸資産にあたります。
減価償却が必要な資産を把握しておこう
減価償却の計算自体は難しくありませんが、計算するには購入金額と耐用年数を把握しておく必要があります。
減価償却は、何年にもわたって経費算入していくため、金額がわからなくならないよう、内容を整理しておくことが大切です。
また、固定資産が増えれば、その分計算が面倒になってくるので、会計ソフトなどの利用も検討し、できるだけ手間を省いていきましょう。
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