フリーランスにおすすめ! 『好きなことしか本気になれない』書評
2021.01.12

みんなのスキル売り買いマーケットココナラの創業者、南章行氏が、2019年8月、初著書を公開しました。
ココナラとは、ものではなく「スキル」をネットで売買するサイト。本業、副業、趣味の充実など、さまざまな目的を持った人々が、自分のちょっとしたスキルを出品し、ネット上で販売しています。
また、一人ひとりが「セルフマネジメント」をしていくことが大切だと言い、そのために何をするべきかについても触れています。
本全体を通して、南氏の体験談をもとに構成。企業買収ファンドやNPOでの経験など、ココナラ設立に至るまでに実行したこと、思い悩んだことなどが本人の言葉で書かれており、企業の社長というよりは一人の生身の人間としての人物像をうかがい知ることができる内容となっています。
華やかなキャリアを歩みながらも、鬱になりかけるまで自分を追い詰めたことや、NPOの活動を通じて心を満たしていく様子などが迫力のある文章で綴られています。
高い評価を付けている人の口コミ
正解を探すのではなく、選んだ道を自分で正解にしていく
アマゾンでの口コミ総合評価は4.0。★5つを付けた人が58%もいます。
「正解を探すのではなく、選んだ道を自分で正解にしていく」「最高の人と出会うのではなく、出会った人を最高の人にしていく」といった本文中の言葉に対し、多くの人が「心に残った」との感想を記しています。南氏の決断の基準が伝わってくるからではないでしょうか。このようなアドバイスは、読者自身の価値観や判断基準を築くための指南ともなるでしょう。
南氏のキャリアについては、圧倒されてぐうの音も出なくなる人がほとんどですが、その南氏がココナラ創業に至るまでの意思決定手順が詳しく書かれているのは貴重。迷ったときに参考にしたいと考えている読者も多いようです。
「あと50年、今の仕事を続けたいのか? 」。
「パパカッコいいだろ? と言えない仕事はやりたくない」南 章行『好きなことしか本気になれない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019)
これらの言葉は華やかなキャリアの中でも一人の人間として悩みぬいたことが伝わってくる文面です。「共感したり、学んだりしながら一気に読み終えた」というほど読みやすいのは、感情がリアルに描写されているからでしょう。
読者の中には転職中の人など人生の道を選ぶ必要に迫られている人も多く、「自分を築くうえで糧になる」という声が多数挙がっていました。
好きなことを選んでいい
「好きなこと」と言われても、実際は好きなことがわからない人がほとんど。「好きなことを」と言われると余計に動けなくなってしまう人も多いことでしょう。そんな中で本書では、「好きなことがわからない場合はどうしたらいいのか」について触れられています。特に南氏のお父さんの言葉は多くの読者を勇気づけました。
好きなことを自分で選んでいい。
南 章行『好きなことしか本気になれない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019)
「好きなことをしなさい」ではありません。「好きなことを選んでいい」なのです。「しなさい」と言われるよりずっと選択肢が広がりますよね。
なお、著者本人の顔が広いためか、高評価を付けている人の中には本人と面識がある人もちらほらいるようです。
低い評価を付けている人の口コミ
高評価が並ぶ一方で、★一つを付けた人も8%存在しています。
低い評価を付けた人は、南氏の考え方がどうしても好きになれない人。
体験談をもとに本人の人柄を前面に出している構成で、恋愛など個人的な部分についての記述も多いため、好き嫌いがはっきり分かれます。また、南氏のキャリアが華やかすぎて自慢にしか感じなかったり、自分と比べてしまって辛くなる人も一定数いるようです。
たしかに、本書の内容はあくまで体験ベースの話なので、万人に共通するような「教科書」を求めて読むとがっかりする可能性もあります。自分とはいったん距離を置いて「ココナラを作った南氏はどういう人なのか」という視点で読み、取り入れられそうな部分は取り入れていくという距離感を保ちながら読み進めるのがよいでしょう。
南氏の経歴が豪華すぎて、「自分とは違う」「参考になるはずがない」と感じてしまう部分もあるかもしれませんが、その分距離を置いて客観的に読むことができるのではないでしょうか。ビジネスの話なので本人を好きである必要もありませんし、彼の真似をする必要もありません。ココナラのサービスに興味があったり、サービスを使ったことがあったりする方なら、その誕生秘話という気持ちで読めば、興味は持てる内容なのではないでしょうか。
子供に「社長さんになると前よりもお金がもらえないの?」と聞かれた
ココナラを起業する前はヘルスケア事業に取り組もうと思っていたという南氏。会社を辞めてからしばらくは給料もゼロで、ヘルスケアも結局廃案になり、「自称、意識の高いニート」だったと言います。
小学2年生の息子も心配して「社長さんになると前よりもお金がもらえないの? 」と聞いたのだとか。
子どもを持ちながら銀行を辞めて当然周りの反対にあい、とうとう息子にまで詰められる。ご本人の印象にも強く残っている、息子の理解を得るまでのエピソードについても詳しく記述されています。
南氏の本には家族がよく登場します。IT社長というと自分の満足を求める一匹狼をイメージしがちですが、その点では南氏は対照的な人物にもみえます。
自分が納得できること以外に「息子や妻、子どもなど大切な人に胸を張って説明できるか」を折に触れて考えていると言います。
この本をフリーランスにおすすめする理由
「悩む」→「決断する」という過程が学べる
フリーランスになると決断を迫られる場面が増え、その結果も会社のせいにすることができなくなります。自由は時に苦しいもの。そんなとき、南氏がどんなことを考え、どのように決断を下してきたかというストーリーが、非常に参考になるでしょう。また、悩んでいるのは自分だけではないことを思い出すだけでも冷静になれるはずです。非プログラマーがリーダーを務める会社
ITベンチャーで成功する会社は、社長自身がスーパープログラマーであることが多いものです。特にBtoCサイトではその傾向が顕著です。社長自身がスーパープログラマー、もしくはプログラマー出身の企業を挙げてみましょう。・マイクロソフト ビル・ゲイツ
・米フェイスブック創業者 マーク・ザッカーバーグ氏
・Twitter ジャック・ドーシー氏
・YouTube スティーブ・チェン氏
・ドロップボックス ドリュー・ヒューストン氏
・インスタグラムの創始者 ケビン・シストロム氏
・Googleの親会社アルファベットのCEO ラリー・ペイジ氏
・Netflixリード・ヘイスティングス氏
・2ちゃんねる ひろゆき氏
・ライブドア創始者 堀江貴文氏
・メルカリ 山田進太郎氏
・ランサーズ 秋好陽介氏
・GREE 田中良和氏
・はてな 近藤淳也氏
・CAMPFIRE 家入一真氏
・株式会社ドワンゴ 川上量生氏
・さくらインターネット 田中邦裕氏
・グノシー 福島良典氏
いくつかは現在では別の会社が運営していますが、有名なサービスでありかつ、創業期に社長が非プログラマーという会社を探すほうが難しいくらいです。社長の技術の上に成り立つことができたサイトが多い中で、南氏の元の職業はコンサルタント。本書の中ではその難しさを感じさせる記述はありませんが、貴重な成功例ではあるので、非プログラマーでITビジネスに参入したい・している方にとっては必読書と言えるでしょう。
「なぜ働くのか? 」
南氏は全編を通して「なぜ働くのか? 」と読者に問いかけます。「食べていくため」以外に答えられる人がどれだけいるのでしょうか。それに対しても答えは用意されています。「個性というのは人と違うことをすることではない、人と同じでもいいから自分の価値観に合うことをするという意味だ」。
自由というのは楽しいようで苦しいものです。選択肢が広く見えるようで、実際はそうでもない。思い通りに行かないことすべてが自己責任に感じられ、自分を責める原因にもなりえます。何か人と違わなければいけないようなプレッシャーも感じるでしょう。そんな中で「自分の価値観に合っていれば人と同じでもいい」という、考えてみれば当たり前のことが敢えて書かれている。
個性個性と叫ばれる中「同じでもいい」と言われてむしろ安心する読者も多いかもしれません。
このように反論や疑問に対する答えも事前に用意するのは、ビジネスマンの基本。本書の内容からも南氏のビジネス手腕がうかがえます。
ふと共感できたり笑えたり、本人が目の前で話をしているかのような文体が親しみやすく、短時間で読み切れます。
一人ひとりが、心に残る言葉を見つけられる本。同じ人でも違う時期に読めばまた違った感想になるのかもしれません。
ココナラという大規模なサイトを成功させた経営者の人となりを知るという意味でも、ぜひ一度読んでみてください。
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