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経理や消費税納付はどう変わる? 2023年に迫る! 適格請求書等保存方式(インボイス制度)

2021.07.14

フリーランスの大半は、売り上げが1,000万円以下の免税事業者です。

「適格請求書等保存方式(インボイス制度)なんて関係ない」と思っていませんか。
実はこの制度の適用で、小規模事業者はビジネスに不利な状況に陥る可能性が高まっています。

特に法人取引の多い事業者は要注意。適格請求書等保存方式とは何か、どう対策すればいいのかについてお伝えします!

適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは

ここでは、適格請求書等保存方式(インボイス制度)についてご説明いたします。

適格請求書等保存方式の概要

適格請求書(インボイス)とは、売り手が買い手に対して、品目ごとの適用税率や消費税額を正確に伝える書類のことです。

2019年10月の消費税改定に伴い、特定のものを購入するときだけ税率を軽くする「軽減税率制度」が導入されました。

8%(軽減税率)と10%(標準税率)の複数税率になったことで、適格請求書が必要となったのです。

というのも、そもそも消費税は、「売上時に受け取った消費税」から「仕入時に支払った消費税」を差し引いた差額を納付します。

そのため、品目ごとの税率が分からなければ、正確な納付額を把握できません。

そこで導入されたのが、買い手(取引先)に対して適格請求書を交付する「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」です。

ただし、この適格請求書は「適格請求書発行事業者(課税事業者)」しか発行できません。

現在は経過措置として、登録事業者番号が不要な「区分記載請求書等制度」が導入されていますが、2023年10月からは「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」へ移行します。

なぜ小規模事業者に打撃となりうるのか

インボイス制度がスタートすると「小規模事業者が苦境に立たされるのでは?」と言われていますが、なぜ小規模事業者にとって打撃となる可能性があるのでしょうか。

それは、適格請求書を発行できるのが税務署長の登録を受けた “課税事業者のみ”だからです。

インボイス制度がスタートすると、「区分記載請求書等制度」は廃止されるため、適格請求書に記載されている消費税でないと控除できなくなります。

つまり、適格請求書を発行できない免税事業者と取引すると、仕入税額控除の対象にならないので、取引先の負担が大きくなってしまうのです。

そのため、免税事業者との取引をやめて、登録事業者に乗り換えられてしまう可能性があります。

適格請求書を発行するには

引用:国税庁資料「適格請求書 適格簡易請求書」

適格請求書発行事業者の登録申請をする

ここでは、適格請求書を発行する方法についてご説明いたします。

適格請求書(インボイス)には、「適格請求書発行事業者」の登録番号が記載されるため、まずは登録事業者になる必要があります。

登録事業者を希望する場合、納税地を所轄する税務署長へ「適格請求書発行事業者の登録申請書(登録申請書)」を提出してください。

また、インボイス制度が導入される2023年10月1日に登録を受けようとする事業者の提出期限は、原則2023年3月31日(金)までです。

通常、免税事業者が登録を受けるには「消費税課税事業者選択届出書(課税選択届出書)」を提出して、課税事業者になる必要があります。

しかし、2023年10月1日を含む課税期間中に登録を受ける場合、課税選択届出書を提出しなくても、申請書だけで登録を受けることが可能です。

登録事業者になると、
  1. 取引先の求めに応じて適格請求書を交付する
  2. 交付した適格請求書の写しを保存する
義務が生じます。

適格請求書に記載すべき事項を必ず記入する

適格請求書には、記載が義務づけられている項目があります。

【適格請求書の記載事項】

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  2. 取引の年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した金額(税抜きor税込み)および適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

【記載例】

引用:国税庁資料「適格請求書 適格簡易請求書」

なお、小売業や飲食店業、タクシー業といった、不特定多数の人に対して販売などを行う場合、“宛名不要”の「適格簡易請求書」が認められています。

【適格簡易請求書の記載事項】

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  2. 取引の年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した金額(税抜きor税込み)
  5. 税率ごとに区分した消費税額等または適用税率

引用:国税庁「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます

また、消費税額の端数処理は「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」など、事業者側で自由に決められますが、商品ごとの端数処理は認められません。

さまざまな特例

適格請求書にはさまざまな特例があります。

適格請求書の交付義務免除
バス・電車での運送や自動販売機など、適格請求書の交付が困難な取引は、交付義務が免除されます。

【適格請求書の交付義務が免除される取引】
  1. 公共交通機関である船舶、バス・鉄道による旅客の運送(3万円未満)
  2. 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡
  3. 生産者が農業協同組合、漁業協同組合または森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡
  4. 自動販売機により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満)
  5. 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたもの)

※それぞれ所定の要件があります。

委託販売には、「媒介者交付特例」という受託者が適格請求書を発行できる特例があります。

これは、

  1. 委託者⇒受託者に適格請求書発行事業者である旨を通知する
  2. 受託者⇒適格請求書の写しを委託者に交付し、買い手に受託者の適格請求書を交付する
といった特例です。

帳簿のみの保存で仕入額控除が認められる場合
通常、仕入税額控除を受けるには、帳簿と請求書の保存が必須要件です。
しかし、請求書等の交付が困難な取引に関しては帳簿が保存されていれば、控除を受けることができます。

【対象となる取引】
  1. 公共交通機関である船舶、バス・鉄道による旅客の運送(3万円未満)
  2. 自動販売機により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満)
  3. 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたもの)
  4. 適格簡易請求書の記載事項を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引
  5. 古物営業・質屋・宅地建物取引業を営む者が、適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産を取得する取引
  6. 適格請求書発行事業者でない者から再生資源・再生部品(棚卸資産のみ)を購入する取引
  7. 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当等に係る課税仕入れ

免税事業者からの課税仕入れにかかわる経過措置
インボイス制度がスタートすると、登録事業者以外からの課税仕入れは、原則として仕入税額控除ができません。

税額控除不可を理由とした、免税事業者との取引終了事案が発生すると考えられるため、インボイス制度導入後、一定の割合で控除できる経過措置が設けられています。
経過措置の期間
割合
2023年 10 月1日~2026年9月 30 日
仕入税額相当額の 80%
2026年 10 月1日~2029年9月 30 日
仕入税額相当額の 50%

免税事業者はどうすればいい?

主な取引相手が消費税を納付する必要のない「一般消費者」や「免税事業者」の場合、免税事業者のままで問題ありません。

しかし、主な取引相手が課税事業者の場合は、適格請求書を発行できる「登録事業者」になることも検討する必要があるでしょう。

ただし、登録事業者になれば、今まで免除されていた消費税納税の義務を負うことになります。

免税事業者のままでも、交渉の上で「これまでの税込金額を税抜の本体価格として請求する」といった方法もあります。

税抜本体価格として請求すれば、全額経費として計上できるため、取引先のダメージを軽減することが可能です。

また、取引先の外注に対する考え方は異なるため、仕入税額控除ができないからといって必ずしも取引終了になるとは限りません。

よって、「インボイス制度が始まったから課税事業者になる」と判断してしまうのは、やや早計でしょう。

重要なのは、事業の状態や競合の状況、現時点での消費税額などを加味して、「免税事業者のまま続ける」or「登録事業者になる」を慎重に検討することです。

インボイス制度導入後も経過措置はあるため、しばらく様子を見ながら、どちらにするべきかを考えるのもアリではないでしょうか。

フリーランスも適格請求書等保存方式(インボイス制度)の適用に備えよう

企業からの受注案件をメインに取り扱うフリーランスにとっては、適格請求書等保存方式(インボイス制度)は死活問題になりかねない重大な問題です。

インボイス制度の導入が目前に迫っているからといって結論を急ぐと、損をすることにつながるため、慎重に検討しましょう。