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住岡麻依さん(公認心理師)に聞く! フリーランスの働き方とコロナ中の心のケア

2021.03.26

公認心理師として個人のカウンセリングからカウンセラーを目指す方への指導、企業への研修などを幅広く手掛けている住岡麻依さん。カウンセラーという仕事があまり一般的でなかった時代から今まで、どのようにカウンセラーの地位を築いてこられたのか。そして、カウンセラーから見たコロナ禍のメンタルヘルスとは? 住岡さんに直接貴重なお話をうかがいました!

原点は「もっとこの人に幸せなキャリアを考えてあげたい」という気持ち

カウンセラーは、企業の中で従業員の健康診断をしているイメージが強いのですが、フリーランスとしてできるお仕事なのですか。


カウンセラーは企業で内勤ということは少なくて、多くは個人事業主です。

私の場合は、官庁に対して入札をしてくれる会社さんを通して職員相談の研修を長くしていました。入札なのでどの企業で働くかは毎年変わります。会社に籍はあってもあくまで個人事業主として登録しているという形です。

それから別の団体を通して学校に派遣される、特別支援巡回相談心理師としての仕事もあります。
さらにNPO法人コミュニティカウンセラー協会 に副理事長として在籍しており 、そこを窓口としていただいている仕事もあります。

カウンセラー歴17年ということは、かなりキャリアの初期にカウンセリングを始められてずっと続けられているんですね。


普通に会社勤めしていた経験もあります。始めは人材派遣、二社目は心理マーケティング分析の会社にいました。「心理マーケティング」と言っても聞きなれないかもしれませんが、「おむつとビールを一緒に置いておくと売れやすい」といった販売戦略や「この人とこの人が一緒にいると一方が辞めてしまう可能性が高いから、チームをこう編成しよう」といった人事戦略のアドバイスをする仕事でした。

カウンセラーになりたいと思った理由はなんでしたか。


始めにカウンセリングを学び始めたときは「ほかに興味のあることがない」っていう消去法だったんですよ。学部の勉強もすごく難しかったです。生理的な反応、統計などずっと実験実験。

気持ちが変わってきたのは働き始めてからです。最初の仕事はキャリアカウンセリングだったのですが、かかわった人に対して「もっとこの人に幸せなキャリアを考えてあげたい」っていう思いが湧いてきたんです。

相談の技術が上がっていくことが楽しくて、会社員をしながら土日は勉強したりボランティアしたりするようになりました。そこから少しずつ仕事が取れるようになっていったんです。

ボランティアから始められたのですね。では「カウンセラーを仕事にしよう」と思ったきっかけは何かあったのでしょうか。


今でも「この仕事にしよう」っていうほど、決まった仕事をしているっていう意識はないですね。一週間の中でも学校に行く日、相談を受ける日、心理学について教える日というのがあります。フリーランスになってから十何年の中で、自分が得意なところだけを残してそうなりました。私の場合は教えるのが得意なので教える仕事が多いですね。

卒業当時はまだカウンセラーという仕事は一般的ではなく、カウンセリングを学んだことのある人はたくさんいても実際その仕事ができる人はそんなに多くなかったのでチャンスに恵まれたな、とは思います。

時代の変遷とともに仕事の内容もどんどん変わっていきます。

時代の変化によって生まれた新しい仕事とはどんなものでしょうか。


学校での特別支援の仕事もそのひとつです。特別支援は学校に出向き一人ひとりの個性に応じた伝え方を先生にアドバイスする仕事なのですが、そういった需要も20年前は存在しませんでした。やっとここまで来たという感じです。

「公認心理師」という国家資格が3年前にできたのも大きいですね。とはいえ、まだ資格自体知らない方も多いのでまだまだこれからだとも思います。カウンセラー志望の方の人数に対して、仕事の数はとても少ない状況です。

コロナ禍は、「自分のためだけだと思わず、声を掛け合って過ごそう」

コロナでまた時代が変わり、失職や急激な職場環境の変化にさらされている人が多いと思います。かなりメンタルヘルスにも気を付けないといけない時期ですよね。


危ないですね。女性の自殺率が上がっているというデータもあります。本当はほかの人としゃべるのがいいのですが、引きこもってしまう人もいます。オンライン相談の存在は知っていても、つい遠慮してしまう人も多い。悩んでいるときに、わざわざそのことで誰かに電話をかけるということはできない人がかなりいます。「みんな大変なのに申し訳ない」って思ってしまうんですね。

職場環境が悪くても自殺するまで仕事を辞めない人もいます。なぜそんなことになるのか。


自殺をする人の8割以上はそのとき鬱状態になっているというデータがあります。鬱状態になると、症状として「この道しかない」と思い込んで非常に視野が狭くなるんです。「視野狭窄」と呼ばれているのですが、細い道しか見えていなくて、そこから落ちたら自分は終わりだと思ってしまいます。症状が重くなれば重くなるほど、その道が細くなっている。だから「会社を辞めたら人生が終わり」といった発想になるんです。

中でも男性は急性の鬱にかかりやすく、鬱で自殺するリスクは2倍と言われています。女性は鬱にかかるリスク自体は男性の2倍あるのですが、自殺に至るまで追い詰められる頻度は低いです。
急性の鬱の場合は「異動して一か月程度で自殺」ということもあり、周りの人にはなぜそれが起こったのか全然わからないということもあります。

鬱って命に係わる怖い病気なんですね。自分が壊れないために、一人ひとりができる自衛策を教えてください。


悩み事を抱えているのはみんな一緒なんです。なんでもない話のために人と会ったり、ちょっとしたことでも用事を作って話をしたりと、遠慮せず誘い合ったほうがいいですね。誘う側も、自分のためだけだと思わなくていいんです。声を掛け合うのは、お互いにとって大事なことなんですよ。

それから、運動と睡眠、栄養は非常に大事です。でも疲れているとそれすらめんどくさくなるんですよ。めんどくさくなりはじめたら、危険サインだと認識してください。そして、自分にとって楽しいことから取り組むのがいいでしょう。おいしいものを食べるのが好きなら食べる。男性は寝ていない方が多いのでまずは寝るところからですね。

スマホのスクリーンタイムにも注意してください。疲れているときほどスマホを見てしまうものなんです。スマホはアラームなどをかけて切るようにしましょう。

心の緊急時に備え健康なときに相談場所をいくつか確保しておく

友達や同僚から鬱や「死にたい」などの相談を受けることもありますよね。そのときはどう対応したらよいでしょうか。


自分だけで対応しようとしないことですね。専門家に相談できればベストですが、周りにそういう人がいない場合は、ほかの友達や同僚でもいいんです。なぜかというと、自分だけの判断で対応した場合、相談を受けた方が「あのときこうしていれば」など、自分の対応に後悔してしまうことがあります。ですから何人かで対応を決めるほうがいいんです。

フリーランスの場合は、相談先がなかなか見つからないということもありますよね。


緊急時に備え、安い相談先をいくつかリストアップしておくといいと思います。うちのNPO(NPO法人コミュニティカウンセラー協会)でもいいですし、公共のところでもいいし。

なぜ複数必要かというと、無料のところは回線が混雑してつながらない時間帯がかなりあるんです。

「いのちの電話」や厚生労働省が運営する「心の耳」などで働いている友達もいるのですが、忙しすぎてすべての電話を取ることは不可能だそうです。

けれども突発的に「死にたい」と思ってしまうのは心の緊急事態。すぐに繋がらないと危ないです。万一病的な心理状態に陥ったときに備え、健康なうちにいくつか相談できる場所をリストアップしておくといいですね。備えあれば憂いなしです。

電話がつながらないほど需要があるのになぜ仕事がないカウンセラーがいる状況なのでしょうか。


やはり金銭面が障害になっています。カウンセリングだけでは健康保険の対象になりません。カウンセラーがいる診療所もあるのですが、医者が必要と認めた人だけしか受けることができません。精神科などに行くのはハードルが高いし、医者に行ったところでカウンセリングが受けられるとは決まっていないという状況です。時代も変わってきているので、少しずつ改善していくといいなと思っている部分ですね。

子育てしながら細かい仕事をこなしてきたことが今につながっている

そのような状況で、会社を辞めて独立するのは勇気が要ったのでは?


2社目は独立することは決めていて「独立する前にもう少し勉強しよう」という気持ちで入ったんです。会社に行きながら個人で婚活カウンセリングなどもやっていました。そして「そろそろかな」と思って会社を辞めたので、決意は固かったです。

では独立後すでに売り上げがある状態で順風満帆な走り出しでしたね。


そうでもないんです。子供が生まれ、夜は仕事ができなくなったので、婚活カウンセリングはほどなく辞めざるを得なくなりました。デートのアレンジやパーティーのアレンジもすべて夜。そこから、試行錯誤が始まります。

子供に手がかかる、夜は仕事NG。そういった条件を踏まえ、カウンセラー以外の仕事をやっていた時期も5~6年間あります。隙間時間を見つけてはカウンセラーとしても細かい仕事をいろいろとこなしていましたね。

けれども今思えば、その時期があったからこその現在なんです。

細かい仕事や関係なく見える仕事がどのようにつながるのですか。


たとえばですが、ICT教育の会社で、小中学校に出前授業をしにいくバイトをしていたことがあるんです。すると上司から「霜岡さん、メンタルヘルスの仕事しているんですよね」という話をされました。そして「こういう仕事、取れそうだけど取る? 」と、カウンセリングの入札の仕事を回してくれるようになったんです。そこから始まって、今では大口の話を受けることもできるようになりました。その会社さんとはそれからずっと付き合いがあります。

教える仕事を始めたのは、産業カウンセラー協会という養成機関でした。大学を卒業した当時は教えてほしいというニーズはあまりなかったのですが、時代の変化とともに来てくれる人が増え、いつのまにか自分主催で教室を開けるまでになりました。

カウンセラー仲間とNPOの立ち上げも行いました。すると、「資格は取ったけれども仕事がない」という人たちがそこに集まるようになったんです。そこで毎月勉強会を開催するようになりました。そうするうちに、この勉強会をNPOにしてみんなで仕事を見つける方法を考えたらいいんじゃないか、という話が持ち上がって。今は勉強だけで実戦経験のない人たちに仕事を紹介したりもしてます。

SNSも活用しているようですね。


そうですね、今の人間関係でも、SNSで突撃して仲良くなった人が結構います。カウンセラー仲間に、社会起業家の方、起業支援の方など。

30歳くらいでシニアカウンセラーの資格を取得したときもそうでした。普通はすぐに実務に就くことなんてできないんですが、たまたまmixiで急募情報を見つけたんです。早速連絡して採用が決まり、そこから15年くらいその方と仕事させていただいています。

それ以外にも、SNSから直接「話の聞き方のアドバイスがほしい」「カウンセラーになりたい」などの相談を受けることもあります。

「聞くことを勉強する」というと?


カウンセラーになるには自分の問題を解決しておくと不可欠です。どうしても「親との問題」など自分が聞いていて辛くなってしまうジャンルがある。人の話を聞くためには、自分自身と相手の間に線が引けるようになることが欠かせません。心理職のプロは最初に線引きの訓練をするので、相談内容を引きずるということはありません。その部分のトレーニングを提供しているんです。

「聞くことを勉強する」効果はそれだけではありません。回数を重ねるうちに「悩みが解決した」「誰かとの関係がよくなった」「夢がかなった」ということも起こります。セッションで「しゃべる」と「聞く」をお互いにしていく中で、なりたい姿になっていく、それを見ると嬉しいですね。

お互いが違いを知り、世界を少し優しくすることに貢献していきたい

お仕事以外にも、イベントやボランティアなど、どんどんチャレンジされてきたのですね。その意欲はどこから湧いてくるのですか。


好奇心ですね。子供が小さいときはできることが限られていましたので、隙間時間を有効活用する習慣ができているのだと思います。
大きく「未来にこうなったらいいな」というのを思い描いていくと、いろいろな縁が来ます。それを毎回つかみ取っているうちに、やりたいことに近づいている実感があり、それもエネルギーになっていますね。

お仕事のやりがいはフリーランスの場合とお勤めの場合で違いますか。


私は得意なことと不得意なことの差が大きいんです。会社員のときはできることはすごくできるのに、ちょっとしたことができなくて苦しみました。子供を生んでからはその傾向がさらに顕著になって「できることだけをやろう」って割り切ることにしたんです。

今はNPOの中にお金の計算やスケジュール管理をしてくれる人もいて、本当に自分の得意なことだけやればいいという状況にやっとなってきました。おかげで今はすごく楽しいんですけれど、フリーになってすぐそうなれたわけではなく、そこに至るまではいろいろな試行錯誤がありましたね。

始めのころは全部自分でやっていて、ほかの人に相談しても余計わからなくなり大変でした。でも全部自分でやったからこそ、経営面もわかったし、NPOの立ち上げ時にもその知識が役立ちました。全部やったうえで無理な部分を任せるというふうになったから、結果的にはよかったんじゃないかなと思います。

今後やりたいことや目標を教えてください。


好奇心が旺盛で今後もいろいろなことに興味を持つと思いますが、最終的には「多様性」ということを大事にする社会に貢献できればいいなと思ってます。

他人の話を聞くことによって、「この人ってこうなんだ」違いを知ることは自分を知ることでもあります。自分の見えてる世界は一つじゃなくて、いろんな人が見ているそれぞれの世界があるんですよね。

カウンセラーの仕事を通して「お互いの違いを知ることによって、世界が優しくなる」ということがわかってきました。

特別支援教室では先生と違う世界を見ている子がいる。だから「この子はこういうふうに見ている」というのを先生に伝える。違いによるすれ違いをつなぐことをしているんだと思うんです。そうすることで、世界が少しでも優しくなればいいなと思います。その価値観に合うことであれば、積極的にチャレンジしていきたいです。

では最後にフリーランスの皆さんにメッセージを!


働くモチベーションは4種類あるんです。一つは「人とのつながり」がモチベーションの人。次に「楽しい」、「おいしい」とか「うれしい」といった体験を求める人。数字がモチベーションの人もいてゲームのように勝ったり負けたりといったことに燃える人もいます。私自身の場合は試行錯誤というか、何が一番いいやり方なのかを追及して行くことがモチベーションです。

ですから、まずは自分自身のモチベーションを見つけてください。それを大事に好きなことをしていくっていうのが結局世の中のためになるんですよね。いい仕事をするためにはまずは、自分のことをよく知ることが大事です。もし一人で考えるのが辛かったら、相談は下記のサイトで受け付けています!

霜丘 麻依(シニア産業カウンセラー)に相談する - オンラインカウンセリングのcotree(コトリー)